月収45万円の夫を亡くした妻がもらえるはずだった遺族年金が、2336万円からわずか365万円へ──。政府が今国会で成立を目指す年金制度改革法案により、「遺族年金」の給付水準が大幅にカットされる見通しとなった。この制度変更は、老後や不測の事態への備えとして年金制度を信じてきた多くの国民にとって、深刻な打撃となりうる。

話題の要点まとめ
今回の年金改革法案では、厚生年金の報酬比例部分(いわゆる2階部分)について、遺族への給付期間を原則「5年」に制限する内容が盛り込まれた。これにより、従来は「生涯にわたって受給」できていた遺族年金が、大幅に制限されることになる。
2028年4月以降、夫に先立たれた時点で60歳未満の妻は、遺族厚生年金を「5年間のみ」受給できるよう変更される見通しである。この制度変更は段階的に実施され、初めは40歳未満の配偶者から対象となる。
関連ニュースの動向・背景
この法案の背景には、2024年に実施された厚生労働省による「年金財政検証」がある。検証では、現行制度のままでは2057年までに基礎年金の支給水準が現在より3割低下するとの見通しが示された。この結果を受け、政府は厚生年金の報酬比例部分を減額して、その分を基礎年金に充てるという改革案を検討。
当初案にはこの「底上げ策」が含まれていたが、自民党内からは「選挙への悪影響」を懸念する声が相次ぎ、法案は一時提出見送りに。その後、立憲民主党の要求を受けて修正案が提出される形となった。
報道の多くは基礎年金の底上げ策の是非に注目しているが、実際には「遺族年金の支給制限」という変更こそ、国民の生活に直接的な影響を及ぼす重要なポイントである。
専門家のコメント・データ
年金制度に詳しい社会保険労務士の北村庄吾氏は、「遺族年金には生命保険的な役割があり、民間保険であれば支給条件の変更はあり得ない」と指摘する。
たとえば、月収45万円の会社員だった夫が55歳で亡くなった場合、妻が受け取る遺族厚生年金は年約73万円。現行制度では平均寿命(87歳)までの受給で総額2336万円となるが、改正後は5年間の支給でわずか365万円になる。約1971万円の給付減となる計算だ。
北村氏は「これはもはや保険契約の一方的な破棄に等しい」としており、制度変更が年金制度への信頼を著しく損なう可能性を警告している。
過去の類似事例と比較
過去にも年金制度における「支給条件の変更」は行われてきたが、ここまで大幅かつ生活保障に直結する給付カットは異例である。
たとえば2004年には「支給開始年齢の引き上げ」が実施されたが、これは数十年前から段階的に告知され、準備期間も十分に取られていた。一方、今回のような「給付期間の短縮」は、対象となる世代の生活設計を根底から覆しかねない。特に、専業主婦やパート勤務など自らの年金受給額が限られる女性層にとって、遺族年金は老後の生活を支える大きな柱である。
この点を踏まえれば、「支給カット」は単なる制度改定以上のインパクトを持つ。制度への信頼性、そして将来設計への影響は計り知れない。
まとめ・筆者の一言
これはかなりショックな内容ですよね……。年金制度って、老後のための蓄えというだけじゃなくて、「万が一の時にも安心」っていうのが前提だったと思うんです。でも、その大事な保障が、あまりにあっさり削られてしまうのは、本当に納得いかない人も多いはずです。特に配偶者を亡くしたばかりの人にとって、5年で支給が打ち切られるなんて、生活再建が難しくなるのでは?と思ってしまいます。
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【業界】保険業界・フィンテック業界
【注目株・企業名】日本生命保険(国内)、MetLife(メットライフ・海外)
民間の生命保険会社では、こうした給付条件の変更は基本的に契約時点の内容が守られるのが原則ですよね。これを機に「公的年金では不安だから民間保険も検討したい」という人が増えそうです。保険業界には追い風が吹くかもしれません。
誰かに話すならこんな風に話して
「最近の年金改革、けっこうやばいらしいよ。遺族年金って昔はずっともらえたのに、今後は5年間だけになるんだって。もし夫が亡くなったら2336万円もらえるはずが、たった365万円に減るって……。公的保険なのに、民間だったら契約違反レベルだよね」
引用元:日経新聞、時事通信、週刊ポスト(5月29日配信)
