トヨタ自動車は2023年、世界販売台数で1123万台を記録し、4年連続で世界首位に立った。営業利益は4兆円を超え、時価総額も60兆円以上という驚異的な数字を残している。しかし、豊田章男会長は「数字は目標ではない」と言い切る。なぜ、世界有数の自動車メーカーが、数字至上主義を否定するのか――その背景にあるのは、人間力を軸にした“トヨタの哲学”である。

話題の要点まとめ
- トヨタは販売台数や営業利益などの数字を「目標」として掲げない姿勢を取っている。
- 豊田章男会長は「人間力の向上」を企業活動の中核に据えており、現場主義を徹底。
- 「もがいている姿を書いてほしい」と語るなど、100年に一度の産業変革期に誠実に向き合う姿勢を貫いている。
- EV一辺倒ではなく、多様なパワートレインを展開することを「お客様のニーズが第一」とするトヨタの方針と結び付けている。
関連ニュースの動向・背景
2020年代に入り、自動車業界は「100年に一度の変革期」と呼ばれる時代に突入した。環境規制の強化やEV(電気自動車)シフトの波が加速する中、欧米の自動車メーカーは次々とEV専業への転換を表明。中国勢の台頭もあり、グローバル競争は激化している。
一方でトヨタは、「すべての選択肢を用意する」ことを基本方針に掲げ、BEV(電池式EV)、HEV(ハイブリッド)、PHEV(プラグインハイブリッド)、FCV(燃料電池車)と多様なパワートレインを展開。豊田章男氏は「お客様が必要とするクルマを提供することがトヨタの使命」と繰り返し述べており、政府主導のEV偏重に懐疑的な姿勢を示してきた。
専門家のコメント・データ
経営戦略に詳しい一橋大学の名和高司特任教授は、「数字を重視するのは当然だが、それが目的化すると組織は硬直する」とし、トヨタの方針を次のように評価している。
「『現地現物』や『考える人づくり』といったトヨタの文化は、データに流されがちな現代の経営において貴重な逆張りだ。人間の判断力を尊重する姿勢が、持続的成長につながっている」
また、2023年のトヨタの業績は前年比7.2%増の1123万台と、パンデミック以降のサプライチェーン混乱を乗り越えた成果といえる。営業利益は4兆9000億円に達したが、豊田氏は「数字だけを与えると人は何も考えなくなる」と警鐘を鳴らしている。
過去の類似事例と比較
数字至上主義のリスクが顕在化した過去の事例として、2000年代後半の米ゼネラルモーターズ(GM)を挙げることができる。当時、販売台数の世界一を維持するために無理な生産計画や過剰なインセンティブを実施した結果、2009年には破綻へと追い込まれた。
対照的にトヨタは、2009年に初の赤字を経験して以降、経営改革を推進。特に豊田章男氏が社長に就任してからは、現場への権限移譲や「もっといいクルマをつくろう」という曖昧だが深いメッセージを掲げ、人間中心の経営に舵を切ってきた。
この姿勢は、2023年の実績が示すように、結果的に「数字」をも超えていく経営スタイルとして結実している。

まとめ・筆者の一言
数字にとらわれず、現場の「人」に重きを置く経営って、本当にすごいですよね。普通、世界一の企業ともなれば「もっと台数を!」「もっと利益を!」となりがちなのに、そこをグッとこらえて「もっといいクルマを」と言えるのは、並の覚悟じゃないと思います。
「人間力」とは何か、自分らしく生きるとはどういうことか──そんな問いにまで踏み込むトヨタの人づくり。経営者でなくても、日々の仕事に向き合う全ての人にとって示唆に富む内容でした!
このニュース、これと関係あるかも?
【業界】自動車産業・モビリティ関連
【注目株・企業名】テスラ(TSLA)、BYD(比亜迪)、日産自動車(7201)
EVシフトを進める企業としてはテスラやBYDが有名ですが、トヨタのように「多様な選択肢」を重視する企業の戦略って、逆に差別化になってる気がします。日産もe-POWERなどの技術で中間解を模索していますよね〜!
誰かに話すならこんな風に話して
「トヨタって、売上や台数で一位になっても全然それを目標にしてないんだって。数字だけ追ってると、人は考えなくなるって豊田章男さんが言ってたらしくて、すごく納得した。なんか、どこかの現場で毎日一生懸命やってる人たちのことを大事にしてる会社なんだよね。数字より“人間力”っていう考え方、すごくない?」
引用元:Business Insider Japan、ロイター通信、日経新聞
