日本製鉄による米USスチールの買収計画が、長期にわたるこう着状態を脱し、大きく前進した。成長市場と位置付ける米国への執念の背景には、国内市場の縮小と中国市場の飽和という構造的課題がある。今回はこの動向の全貌を解説する。

話題の要点まとめ
日本製鉄(以下、日鉄)が進めていた米鉄鋼大手USスチールの買収計画が、1年以上にわたる停滞を経て、ついに実現に向けて動き出した。最大の転機となったのは、トランプ前大統領によるSNS上での支持表明とされている。
日鉄は、米国をインドと並ぶ成長市場と位置づけ、国内および中国市場の将来性に見切りをつけてきた。今回の買収はその戦略の一環であり、米国市場での「インサイダー」としての地位確立を狙ったものとされている。
買収に伴うコストは、当初の2兆円超からさらに増加し、総投資額は製鉄所新設を含めて約140億ドル(約2兆円)に達する見込みである。
関連ニュースの動向・背景
日鉄がUSスチール買収を発表したのは2023年12月。当初から米政権や全米鉄鋼労組(USW)の反発が予想され、承認獲得は困難と見られていた。
しかし、日鉄は粘り強く交渉を続け、当初計画の買収額141億2600万ドルに加え、約3850億円規模の追加投資を表明。これにより、米国内での雇用創出や技術移転の意義を訴え、承認獲得の足掛かりとした。
そして24日、トランプ前大統領が「計画的なパートナーシップ」としてこの買収に肯定的な姿勢を示し、情勢が大きく転換したと見られている。ただし、この「パートナーシップ」が完全買収か、それとも新たな共同出資の枠組みかは依然として明確ではない。
専門家のコメント・データ
経済アナリストの間では、今回の買収が「日鉄の海外展開戦略の試金石になる」との見方が広がっている。背景には以下のような構造的な要因がある。
- 日本の鉄鋼需要は少子高齢化とともに右肩下がり
- 中国市場は過剰生産と価格競争で利益率が低迷
- 米国市場は自動車産業を中心とした高付加価値鋼材の需要が旺盛
また、USスチールは老舗企業であると同時に、近年では再編の波にもまれており、経営基盤の強化が求められていた。日鉄の技術力と資本を取り込むことは、米国内でも一定のメリットがあるとの評価も出ている。

過去の類似事例と比較
鉄鋼業界における大型買収として記憶に新しいのは、アルセロールとミッタルの統合(2006年)である。これにより誕生したアルセロール・ミッタルは、世界最大の鉄鋼メーカーとしてグローバル市場を席巻した。
一方で、新日本製鐵(現・日本製鉄)が2012年に住友金属工業を吸収合併した際も、国内再編によるスケールメリットが期待されたが、グローバル市場での存在感は限定的であった。
今回のUSスチール買収が成功すれば、日鉄は初めて「世界市場の中で影響力を持つプレイヤー」としての地位を築く可能性がある。
まとめ・筆者の一言
正直なところ、最初にこの買収話が出たときは「また厳しい交渉になるな」と思っていました。でも、日鉄が米国にここまで本気で賭けていることがはっきりして、見方が変わった人も多いんじゃないでしょうか。
特に、ただ買収するだけじゃなくて、投資で現地経済に貢献しようという姿勢は、好感が持てるところだと思います。今後の最終合意とその後の統合プロセスに注目したいですね!
このニュース、これと関係あるかも?
【業界】鉄鋼業界・資源セクター
【注目株・企業名】アルセロール・ミッタル(ArcelorMittal)、ポスコ(POSCO)
アルセロール・ミッタルはグローバル鉄鋼業界の巨人で、今後の日鉄との競合や提携にも影響が出そう。ポスコは韓国最大の鉄鋼メーカーで、アジアでの競争も激化するかもしれませんね!
誰かに話すならこんな風に話して
「日鉄がアメリカの大手鉄鋼会社を2兆円以上かけて買おうとしてるらしいよ。日本の市場が縮んでるから、成長してるアメリカで稼ごうって感じなんだって。トランプも買収に賛成してるっぽいし、結構本気みたい」
引用元:時事通信、ロイター通信、Bloomberg
