年2回の賞与があたりまえとされてきた日本企業の給与制度に、変化の兆しが見え始めている。特に注目を集めているのが、ソニーグループによる「賞与の給与化」、すなわち冬の賞与を廃止し、月給に組み込むという決断である。この動きが一部の企業にとどまらず、大企業全体へと波及していく可能性もあるとされており、日本の雇用慣行に大きなインパクトを与える出来事として注目されている。

話題の要点まとめ
ソニーグループが実施を発表した賞与の給与化は、従来の年2回支給されるボーナスの一部または全部を月例給与に組み込むものであり、これにより年収全体は維持しつつも、月々の給与が増えるという形をとる。これに先んじて、大和ハウスやバンダイなどの大企業も、すでに賞与給与化を導入しており、初任給の大幅な引き上げや若手層の年収増加につながっている。
この「賞与の給与化」には、表向きは収入の安定性向上や採用競争力の強化が掲げられているが、実際にはより深い制度的変革、すなわち年功序列の撤廃と成果主義の徹底という背景もある。
関連ニュースの動向・背景
大企業の人事制度において、ボーナスは長らく年功序列型報酬の象徴でもあった。企業の業績に応じた支給とはいえ、その実態は労働組合との交渉の対象となることが多く、従業員全体に一律の支給がなされるケースも多い。こうした仕組みは、個人の業績とは切り離された「横並び文化」の温床となっていた。
これに対し、ソニーが取り入れている「ジョブグレード制」は、職務内容や役割に応じて等級や報酬が決まる仕組みであり、年次や在籍年数ではなく、現在の成果や職責が重視される制度である。このような制度と旧来の賞与制度は本質的に相容れない部分も多く、今回の賞与給与化は、報酬体系の整合性を図るうえでも必然的な改革といえる。
専門家のコメント・データ
労働問題に詳しい向井蘭弁護士は、賞与給与化が単なる人事制度改革ではなく、企業戦略の一環である点を指摘している。「年収を安定化させるだけでなく、成果に応じた報酬へと移行するための布石である」と語っており、実際にジョブグレード制のような成果主義をより色濃く反映する制度の運用が進んでいることも見逃せない。
また、労務行政研究所が行った調査によると、2025年夏の賞与は全産業平均で86万2928円、前年比3.8%増と、4年連続での増加傾向にある。しかし、こうした支給額の上昇も物価高によって実質的なメリットが薄れる傾向にあり、月給ベースでの収入安定化を図る企業が増えている理由の一つともされている。

過去の類似事例と比較
過去にも年俸制を導入し、賞与制度から距離を置いた企業は存在する。たとえば外資系企業やベンチャー企業などでは、個人の成果に対して直接報酬が決まる仕組みがすでに浸透している。これらの企業では、毎月の給与に全てを集約する年俸制をベースとし、賞与という概念を設けないことが一般的だ。
一方で、日本型の「生活給+賞与」モデルは安定性を重視した社会的背景を持っており、特に大企業や地方企業では根強く支持されている。このため、ソニーのように制度的な基盤が整った企業でなければ、今回のような大胆な制度変更は難しいとの指摘もある。
まとめ・筆者の一言
「ボーナスがなくなるなんて…」と、ちょっとショッキングに聞こえた方もいるかもしれません。でも、蓋を開けてみれば、年収が減るわけではなく、むしろ安定して毎月の収入が増える人も多いんですよね。とはいえ、年功序列の空気が強い職場にいる方からすれば、ちょっと居心地が悪くなるかもしれません。これからは「仕事で何をしたか」がより問われる時代になってきたのかなと思います。
このニュース、これと関係あるかも?
【業界】人材サービス業界
【注目株・企業名】リクルートホールディングス(日本)、LinkedIn(米国)
最近は人材の評価基準や待遇にも透明性を求める声が強くなっていて、こういった「成果主義」型の報酬制度に対応できる仕組みが求められていますよね。今後、評価や査定の技術を支援するHRテック企業なんかも注目されるかもしれません。
誰かに話すならこんな風に話して
「ソニーが冬のボーナスやめて月給に入れるらしいよ。最初はびっくりしたけど、年収自体は下がらないし、むしろ毎月の給料が増える人もいるみたい。成果主義に本格的に移行するってことなのかもね。これって、他の企業にも広がってくるのかな〜?」
引用元:弁護士JPニュース、労務行政研究所、日経新聞
